刑務所を出た人たちに寄り添い、地域で立ち直りを支える保護司が不足している。高齢化が進み、10年以内に少なくとも4割が退任する見込みだ。持続的に担い手を確保していくため、法務省が設置した有識者検討会で、制度のあり方を見直す議論が始まった。
保護司は、保護観察官と協力し、保護観察中の人たちと定期的に面接して相談に乗ったり、就職先を探したりして社会復帰を支援し、再犯を防ぐ。非常勤の国家公務員だが、支給されるのは交通費などの実費だけで報酬はなく、ボランティアとして活動している。
保護司法によれば、保護司は①社会的信望がある②熱意や時間的な余裕がある③生活が安定している④健康で活動力がある――という条件をいずれも満たす必要がある。保護観察所が推薦し、法相が委嘱する。実際は、退任する保護司らが人脈を頼りに後任を探すケースが多いという。
同省によると、全国の保護司は4万6956人(今年1月1日時点)。保護司法が定める定員(5万2500人)の9割程度にとどまる。70歳以上が4割近くに上り、2008年からの15年間で約17ポイント上がっている。退任の人数が、新任を上回る傾向が続いてきた。
一方、刑法犯のうち、再犯者の占める割合(再犯者率)は21年で48・6%で上昇傾向にある。
今年5月に始まった有識者検討会では、年齢制限や待遇の見直しなどが焦点になっている。
同省は通達で、保護司の新任を原則、「66歳以下」としている。若年の対象者との世代間ギャップを軽減する狙いだ。任期は2年だが「76歳未満」まで再任できるとし、21年からは、一定の条件を満たせば「78歳未満」でも特例で再任を認めている。
ただ、今後も企業の定年延長などの影響で担い手の確保が難しくなるとみられ、年齢制限の緩和や「公募制」の導入などを検討している。
また、保護司は対象者と面接するたびに、保護観察所に報告書を提出している。現在は「実費」として、対象者1人あたり月額約4500~7600円が支払われているが、「負担に見合わない」との声もある。報酬を支払うことの可否なども協議される。
検討会は各地の保護司との意見交換や視察なども踏まえ、24年度中に報告をまとめる方針。必要があれば、保護司法の改正も検討するという。(久保田一道)
漫画「前科者」 主人公・阿川佳代に託した理想像
保護司の奮闘を描いた漫画「前科者」が、2018年から漫画誌「ビッグコミックオリジナル」で連載されている。担い手の確保が課題となる中、原作者の香川まさひとさん(63)は「人間関係が希薄になっているからこそ、弱音を吐ける相手はますます大事になる」と話す。
保護司の仕事を具体的に知っ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル